DIS(Designeted Intermediate System)とは
OSPFではDRと呼ばれる指名ルータが各セグメントで存在したように、Integrated IS-ISでもDIS(Designated Intermediate System)と呼ばれる指名ルータが存在します。
OSPFの場合、リンクステート情報が変更されると変更情報を持つルータが先ずDRに通知して次にDRが全ての隣接ルータにリンクステート情報を転送します。
Integrated IS-ISの場合、リンクステート情報が変更されると変更情報を持つルータが全てのルータにリンクステート情報を送信します。DISは、ルート上の障害などが発生するなどして隣接ルータ同士のリンクステート情報の差異が発生した時に、そのデータベースの同期を取る目的で使用されます。その際にやり取りされるPDUはCSNPです。
なお、Integrated IS-ISはルート情報を LSP(Link State Packet)で アドバタイズします。Ethernet LANのようなブロードキャストネットワークでは、LSPはマルチキャストパケットで送信されます。
DISの選出基準
DISは、事前に設定しておいたプライオリティ値が高いISがDISとなります。プライオリティ値が同じである場合、MACアドレスが最も大きいISがDISとなります。
選出基準1:最も高いプライオリティ値
選出基準2:最も大きなMACアドレス
OSPFでは、DR以外にBDRという存在がありましたが、Integrated IS-ISではOSPFのBDRに相当するルータは存在しません。また、OSPFではDRとBDRが一度選出されると、そのあとにプライオリティ値の高いルータが現れてもDRの切り替わりは発生しませんでしたが、IS-ISの場合は高いプライオリティ値のルータが出現した時点で、DISの切り替わりが発生します。
ちなみに、英文解説などでこのDISのことを「 DR 」と表記している場合があります。例えば以下のような説明文があっても、それはIntegrated IS-ISにおける「 DIS 」を指しています。
・ If the Integrated IS-IS DR fails, a new DR is elected.
・ The Integrated IS-IS DR will preempt.
If a new router with better priority is added, it just becomes active in the network.
・ If there is a tie in DR priority, the router with a higher MAC address wins.
DISの隣接関係
OSPFの場合、各OSPFルータは、DRとBDRとだけ隣接関係を確立していました。
Integrated IS-ISの場合、セグメント上の全てのルータと隣接関係を確立します。
下図の通り、各ルータはDISとだけ隣接関係を確立するわけではなく、セグメント上の全てのルータと隣接関係を確立することから、BDRのようなバックアップの存在は必要ありません。DISがダウンした場合は、DIS以外のルータからDISが選出されることになります。
次回はIntegrated IS-ISのルーティングで使用する「 NSAPアドレス 」について解説します。