ロードバランサ導入時のヒアリング確認項目

ロードバランサ(ADC)を導入する際に、そのメーカーや機種を何にするのかは、一般的にはネットワーク設計上必要となるインターフェース(NIC)数、1秒あたりの接続数、1秒あたりの要求数、最大同時接続数(L4)、ハードウェアSSLの標準・最大TPS・最大TPS、L4/L7 のスループット、必要となるプロセッサ、メモリなどの情報に基づいて選定します。

本記事では、上記のようなロードバランサの機種選定におけるヒアリングポイントを紹介するのではなくて、ネットワークエンジニアが導入作業をする際に必要となる「作業費用」を算出する上で確認すべき点(ヒアリングすべき点)を紹介したいと思います。

ロードバランサ(ADC)を新規導入するのか、既存機器のリプレースなのかによりヒアリングする項目は多少異なるかもしれませんが、以下の点を確認することでおよそどのくらいの稼働工数が必要となるのかを算出できると思います。

※ 皆さんの所属する会社にヒアリングシートがあると思うので詳細はそれで確認しましょう。

◆ バーチャルサーバ(仮想サーバ)数の確認

⇒ バーチャルサーバごとに動作検証が必要となるため、この数を確認することは重要です。

◆ リアルサーバ(物理サーバ)数の確認

⇒ インフラの規模感をつかむためにも、おおよそでも良いので確認しましょう。

◆ バーチャルサーバにアクセスするクライアントデバイス・ソフトウェアの確認

⇒ バーチャルサーバにアクセスするクライアントが、どのようなデバイスであるのかを確認しましょう。具体的にはWindows OSやmacOSなどのPCだけで良いのか、あるいはスマホやタブレットからのアクセスがメインになるのかなど。検証工数を算出する上で必要です。

◆ L4ロードバランス・L7ロードバランスの確認

⇒ L4ロードバランスだけなら検証工数は少なくてすみますが、ADCでSSLを終端する場合は検証工数がそれなりに増えるので、ADCでSSLを終端するバーチャルサーバがいくつあるのかしっかりと確認しましょう。導入前の事前検証では「各種証明書と秘密鍵」をお客様から受領してインストールを行い、しっかりとした動作確認が必要となります。

◆ ロードバランス方式、パーシステンス方式の確認

⇒ トリッキーな負荷分散やパーシステンスを行っていないかどうかを確認します。そして、それを実現するためにiRuleを使用する必要があるかどうかを確認することが大切です。

◆ 社内利用なのか、公開利用なのか、ECサイト用なのかを確認

⇒ 見積依頼時やRFPの受領時には得られる情報だと思いますが、社内で利用する位置づけのADCなのか、外部公開用の位置づけのADCなのかで、検証工数や導入工数が大きく変わってきますのでしっかりと確認しましょう。

◆ 現地での導入作業回数の確認

⇒ 新規導入なら「現地構築作業」「正常系・障害系試験」「カットオーバー時の現地立会」の3回だけで済む場合もありますが、既存機器のリプレースの場合には、フェーズごとの切替作業や統合作業などあって作業回数はシステム環境により大きく異なるのでしっかりと確認!

◆ iRuleなどのプログラム作成が必要なのかを確認

⇒ これが最も重要です。この記事を書こうと思った理由はこの点を伝えたかったからです。当方は過去にこの点の確認が弱く痛い目にあったことがあります。

通信要件を満たすために、とんでもない量のiRuleを作成したことがあります。完全な赤字案件となり社内で色々な方からの信頼を失いました。例えば、既存機器からのリプレースである場合は守秘義務締結のうえでお客様からは既存の設定情報を可能な限り全てを受領して、iRuleの作成がどれくらい必要になるのかをしっかりと確認して作業費用に反映させましょう。

iRuleの基本的な知識は以下の解説で得られますが、サンプルはF5サイトでご確認ください。

⇒ iRuleとは

⇒ iRuleとは Part2

⇒ iRuleとは Part3

設計・構築する上でのヒアリングは別途必要となります。上記の内容はNWエンジニアの作業費用算出にあたり、確認しておくべき項目となります。その他、提出する納品ドキュメントが何であるのかをしっかりと確認しましょう。最も時間のかかる運用マニュアルが必要かどうか瑕疵期間は何か月であるのかなどもしっかりと確認しておくことが大切です。

ちなみに、工数を正確に多く積むだけでなく、リスク費用なども積んで高額なSI費用になってしまうとそもそも案件自体ロストしてしまったり、競合に顧客を奪われたりする可能性もあるのでそこはバランスが必要です。優秀なNWエンジニアの後方支援を得ることも大切です。

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