NSAP(Network Service Access Point)アドレスとは
Integrated IS-ISでは、IPアドレスを端末の識別用のアドレスとして使用しますが、ルーティング自体は「OSIのCLNSのアドレス体系」であるNSAPというアドレスを使用します。
Integrated IS-ISであるから「IPが使える、IPだけで良い」というわけではなく、基本的なルーティング方式はIS-ISであることから、各ルータにはNSAPアドレスを設定する必要があります。Integrated IS-ISでは、NSAPアドレスでルータを識別したり、各ルータがトポロジーテーブルを作成することができます。
NSAPアドレスの構成
NSAPアドレスは「エリアID」「システムID」「NSEL」の大きく3つによって構成されます。NSAPアドレスのフォーマットは次の通りです。
・ AFI(Authority and Format Identifier)
⇒ グローバルIPアドレスのように、ISPや企業ごとに決められたアドレスを使用する。 ※1
・ IDI(Initial Domain Identifier)
⇒ ドメインを識別する情報。
・ HO-DSP(High Order Domain Specific Part)
⇒ ドメインをエリア分割した場合の識別に使用する情報
・ System ID
⇒ デバイスを識別する情報。ルータのMACアドレスまたはIPv4アドレスを使用する。
・ NSEL
⇒ 上位プロトコルを識別するために使用する情報。N-selectorとも呼ばれる。※2
※1 AFIに 0x49 を指定した場合、プライベートアドレスであることを表している。
※2 NSELはNSAPデバイス自体を示す 0x00 を通常は使用する。
◆ When the N-selector is set to zero, the entire NSAP is called a network entity title (NET).
英文でも以下の点( three partsが意味するもの )について理解しておきましょう。
The NSAP is divided up into three parts as specified by ISO/AI 10589.
・ Area ID
・ System ID
・ NSAP Selector
NSAPアドレスの割り当て
それでは、具体的にNSAPアドレスを見てます。NSAPアドレスは16進数表記でありますが、その区切りにはコロン(:)ではなくドット( . )を使用します。
49.0001.1111.2222.3333.00 というNSAPアドレスとなりますが、以下の意味となります。エリアIDだけ「AFI」と「IDI、HO-DSP」の間を( . )で区切る表記となります。
・ 49 ⇒ AFI。プライベートアドレスであることを示す。
・ 0001 ⇒ IDIとHO-DSP。
・ 1111.2222.3333 ⇒ System ID。
・ 00 ⇒ NSEL。NSAPデバイスそのものを示す。
NSAPアドレッシングで、以下のNSAPアドレスの割り当てルールを覚えておきましょう。
・ 同じエリア内では、ISとESは同じエリアIDを使用する。
・ 同じエリア内では、ISとESは異なるシステムIDを使用する。
・ エリアが異なる場合は、同じシステムIDを使用しても問題ない。
・ エリアごとに、異なるエリアIDを割り当てる。
・ バックボーンに所属するレベル2ルータのシステムIDは重複してはいけない。
NSAPアドレスは、インターフェースごとに異なる値を設定するのではなく、デバイスごとに1つ割り当てます。そのため、Integrated IS-ISでは、OSPFのABRのように複数のエリアに所属することなく、必ず1つのエリアに所属することになります。
最後に、NSAPアドレスの割り当て例を見てみましょう。
Integrated IS-ISでは、「CLNS」または「IP」または「その両方」をルーティングできるということを、次回解説するIntegrated IS-ISのコンフィグ設定で理解することにしましょう。
参考:System IDにIPアドレスを使用する場合のConversion
System IDにloopbackインターフェースのIPアドレスを使用する場合のConversionプロセス